保険制度はどうあるべきか

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ほーむ

 先日、朝日新聞の記者の取材を受けました。以前、健保連が老人医療費の拠出金を払うのを拒否したという話を、健保連だけの言い分で構成した記事を朝日新聞が書いたことがあり、そのことに抗議したことがあったために、医療法抜本改正に対する意見を私からも取材するというものでした。
 へんてこなものばかり書いている私なんかから取材してもたいしたことにはならないと思いますが、まあ、方々から取材するということは大変に良いことであり、朝日も進歩したなと感じました。(偉そうに)
       塩谷郡市医師会HPマスコミウオッチ朝日は健保連と仲良し」参照
               
http://www.tochigi-med.or.jp/~shioya/
 保険ルールの矛盾を書くページですが、もう少し広く医療保険の問題点を書くことにします。
 長いので、少しづつ読んでください。
  前提として
  日本の医療は先進諸国の中でも高いのでしょうか。
   96年の国民総生産に対する国民医療費の割合で比較して見ましょう。
   アメリカが14%で1位です。次いで10.5%のドイツ。日本はどうか。
   平均年齢は男女とも断然一位、つまり医療費がかかる年齢層が多いにもかかわらず、
   スペイン、ニュージーランドに次いで7.2%の19位です。
   
  まあ、一概には言えないでしょうが、国民皆保険制度、特に、誰でもどこの病院へでも
  アクセスできるという現在の制度で長生きしていると考えることもできると思います。
  
  将来、高齢化や医療の進歩により現行の医療保険が立ち行かなくなる、ということも
  理解できます。
  ですから、「医療機関は儲け過ぎだ」「検査漬けだ、薬漬けだ」などと医療機関を攻撃
  してばかりいるのではなく、
  「今までと同じ負担では、これからも同じ医療を提供するのが難しくなります。
   どういう医療制度が良いのか、議論しましょう」という姿勢が必要なのでしょう。
   
 医療法改定の前に、

 知っておきたいこと。

  薬価差益について                     (右の欄も見てください)
  
   2000年抜本改定で厚生省が実現を目指したものに薬価の問題があります。
  薬価とは厚生省が決めた薬の値段です。銘柄別です。
  
この薬価と医療機関や調剤薬局の納入する値段の差が薬価差益です。
  薬価差益があるから余分な薬が大量に処方される、という意見があります。
  これらの問題を解決するために
参照薬価制度
が提唱されました。
  では、参照薬価制度を説明しましょう。

 
   
参照薬価というのは、わかりやすく説明すると、
    高血圧の薬で同じ薬効の薬剤を例にとりましょう。
    先発品のW剤の薬価が130円、納入価が120円、
    後発品のZ剤の薬価が90円、納入価が70円としましょう。
    参照薬価となりますとW剤の薬価が120円となります。
    同じ薬効の後発品の上限が70円となります。そこでZ剤は70円です。
    もっと後発のD剤は納入価が40円とするとこの場合は40円になります。
    すると、D剤のメーカーは安く売りたくないので上限の70円で売るようになり薬価は70円になります。
    つまり、薬価が高くなるのです。
    また、新薬として同じ薬効のS剤が出来たとします。
    効き目も良いし、170円でメーカーは医療機関などに売るとします。
    保険では130円までですから、40円は患者さんの自己負担ということになります。
     そういうわけで、新薬は売りづらくなり、製薬会社の開発意欲がそがれる結果にもなります。

 
  この制度は、欠陥が多すぎるし、かえって薬価の上昇を招きます。
  今までの薬価制度では、医療機関は利益を得るために不用の薬剤を大量に処方するのでは
    ないかという、医師不信が根本にあるためにこのような制度が提唱されたのでしょう。
 
  
健保連は、この制度がつぶれたのは医師会の圧力のせいであると、声高に主張して
  いましたが、最近は黙っています。ようやくこの制度の欠陥に気づいたのでしょう。

  
   この制度は、日本への輸出をもくろむ外国の製薬会社の意を受けた、外国政府からの
   圧力もあって、厚生省もつぶさざるを得なくなったというのが本当のところでしょう。
  
  これからは薬価はかぎりなく納入価に近くなるでしょう。今でも5%の消費税を払うと
  納入価のほうが高くなり、薬剤を使用すると逆鞘になってしまうものもあるくらいです。
  
  なにしろ、ますます薬価と納入価の差はなくなるのですから、利益を得るための処方
  なんてありえないことになります。
  
  
参照薬価よりも、薬の無駄をなくすのが先決です。
  
  医療機関や調剤薬局に死蔵されている薬剤を少なくする事が、コストダウンにつながり、
  ひいては薬価を下げることにもなると思います。
  そのためには、現在の薬事法を改正して、薬の卸し問屋が大包装で購入し(安く買えます)
  小分けして各医療機関や調剤薬局に卸すことができるようにすることです。
  
  そうすることにより、期限切れで無駄に捨てる薬剤も減り、コストも少なくなり、
  薬価も下げることができるようになるのです。
  なにしろ日本の薬価は高すぎるのです。
  
その割に先進国のなかで19位の医療費。いったいどういうわけ?
  
 医者は儲けようとして

 薬を出しているのだろうか。

 私は、開業医ですが、

 現在、ある公的病院へも

 顔をだしています。

 すると、

 同じ胃潰瘍でも、

 私は2種類しか処方しませんが、

 病院の若手のドクターは

 4種類くらい処方します。

 胃液を抑える薬1種類、

 粘膜保護剤3種類。

 病院のドクターは

 薬を多く処方したとしても

 収入に無関係です。

 えらい教授がそうしなさいって

 いってるんでしょうか?

 いえいえ、たぶん、

 治すには充分な量の薬が必要だ

 と、思ってるんでしょう。

 ちなみに、2種類でも充分に

 治りますよ。