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日本東洋医学会 関東甲信越支部
  
栃木県部会 第10回学術集会
  
宇都宮グランドホテル平成14年9月1日

プログラム・抄録集

(13:00)開会の挨拶  会長  粕田 晴之 
蒸し暑い梅雨、台風そして猛暑と厳しい天候が続きましたが、会員の皆様には益々ご活躍のこととお喜び申し上げます。
早いもので、会長を引継ぎまして二回目の日本東洋医学会関東甲信越支部「栃木県部会 学術集会」を開催する時期となりました。この一年間、県部会の発展にご協力頂いた会員の皆様に心より感謝申し上げます。また、本年度も、熱心な会員の皆さまから多数の演題ご応募を頂きました。厚く御礼申し上げます。
一般演題は10題で、昨年と同様に発表時間を短縮させて頂きましたが、これまでにも増して活発な討論をお願い致したいと存じます。
教育講演(1)は、自治医科大学呼吸器内科教授・杉山幸比古先生に、呼吸器ご専門立場から漢方補剤の有用性についてお話いただきます。 
教育講演(2)は、長野県佐久総合病院で幅広く臨床経験を積んでこられた水嶋丈雄先生に、自律神経から見た漢方処方について西洋医学の理論的観点からお話いただきます。お二人の先生には、大変ご多忙な日程の中お引き受け頂きました。たいへん興味深い内容のご講演ですので、是非ご期待下さい。 
日本東洋医学会はいろいろな意味で生まれかわることが期待されております。
昨年度は、会場を一新するとともにプログラムをA版に変更し、新しい幹事の就任をお願い致しました。本年度は、明年2月に栃木県文化センターで「市民公開講座」を開催する企画を立てております。また、栃木県部会が10回の節目を迎えることから、日野原正先生を中心に「十周年記念誌」発行の話を進めております。会員の皆様の暖かいご支援、ご協力を頂ければ幸いと存じます。   
どうぞ宜しくお願い致します。


(13:05〜13:45)一般演題セッションT  座長:戸村光宏
  
1.柴朴湯が有効であった頚椎前縦靭帯骨化による嚥下障害の1例
     吉田祐文
      (大田原赤十字病院 整形外科)
  
2.50年以上続いた外傷後ストレス障害(PTSD)が漢方薬で改善した1例
     松村崇史 ほか
      (済生会宇都宮病院 整形外科 ほか)
  
3.抑肝散が著効を示した高齢者の精神運動興奮の1症例
     手塚隆夫 ほか
       (一番町クリニック、宇都宮漢方懇話会 ほか)
  
4.桂枝茯苓丸が著効を示した異型狭心症の一例
     泉田知子 ほか
      (佐野厚生総合病院 内科)


(13:45〜14:15)一般演題セッションU  座長:清水廣三
  
5.六君子湯が有効であった脾虚の1例
     恵川宏敏 ほか
      (独協医科大学 麻酔科学教室)
  
6.心臓疾患に随伴する浮腫に対する五苓散と猪苓湯の有効性
     加藤士郎
      (独協医科大学 心血管・肺内科)
  
7.漢方治療とEBM
     石川鎮清、齋藤 仁 ほか
      (自治医科大学 地域医療、麻酔科 ほか)

【はじめに】最近、EBM(Evidence-based medicine)という概念が急速に普及してきている。
本来、EBMとは臨床試験などの外部の根拠(research evidence)、医師の知識・技能(clinical expertise)、患者の多様性・複雑性(patient preference)の三者を一体として、眼前の個々の患者 (individualized patients) の問題点から出発するbottom-upのアプローチである。しかし、大規模臨床試験の結果をもってevidenceとし、それのみである患者の投薬の指針を決めるような誤った使用法が見られる。実際、ある条件下の高血圧に対してAよりBという降圧剤がよいという1万人規模の臨床試験結果がでたとしても、個々の患者ではBの方がよいということはしばしば経験される。
 一方、漢方治療においては、医師の知識・経験と、個々の患者の状況判断(証に相当する)は重視されきたが、病態生理学的な根拠に乏しく、大規模臨床試験は困難であるとされてきた。そのため多くの臨床医にとって処方の選択は難しい。
【方法】今回、頭痛・脳血管障害などの神経疾患について、過去に発表された漢方治療の論文32編について、EBMの見地から再検討を行った。
【結果と考察】その結果、大部分は無作為割り付け試験を行っていないいわゆるGrade Cに属するevidenceであることが再確認された。しかし、evidenceの強弱だけで判断することは、過去の貴重な蓄積を無駄すことになりかねない。ここでは、少しでも有用な情
を拾い上げるというより積極的な見地から得られた推奨処方についても紹介したい。元来、漢方薬の適応を決める最も重要な指標(証)は、 西洋医学的な病名や単一の症候ではない。
そのため、西洋医学的な病名を唯一の基準にする限り、無作為割り付け試験を行っても漢方本来の有効性を反映できるような臨床試験を企画することは困難であろう。今後は、漢方の証を誰でも容易に把握できるような客観的な指標と結びつけた新たな臨床試験が行われることを期待したい。

 
14:15〜14:20)休憩5分間

(14:20〜14:50)一般演題セッションV  座長:近澤幸嗣郎
  
8.アレルギー性鼻炎(主にスギ花粉症)における漢方と西洋薬の併用療法についての一考察
     金子 達 ほか
      (金子耳鼻咽喉科、宇都宮漢方懇話会 ほか)
  
9.麻黄附子細辛湯の発熱抑制作用に対する検討
     柏渕成一
      (かしわぶち産婦人科)
  
10.肥満、蛋白尿を伴った月経不順に柴苓湯が有効であった1例
     石塚孝夫
      (石塚産婦人科)


(14:50〜15:05)総会

(15:05〜15:15)休憩10分間


(15:15〜16:30)教育講演  座長:粕田晴之

  
(1)肺気腫、COPDと漢方補剤
     杉山幸比古 先生
      (自治医科大学 呼吸器内科教授)

(16:30〜16:40)休憩10分間

(16:40〜17:55)教育講演  座長:手塚隆夫 
  
(2)自律神経から見た漢方投薬のコツ
     水嶋丈雄 先生 
      (水嶋クリニック院長、佐久総合病院東洋内科嘱託、長野県) 

(17:55)閉会の挨拶 副会長 手塚隆夫