ほーむ    保険診療の目次へ   

保険者はこんなチェックをします

 保険者の間違ったチェックを正そうと、
 保険者のレセプトチェック係りに
正しい情報をお知らせしようろしたら
 拒否されました

 正しい医療情報を知らないで、レセプトをチェックするなんて・・・。

   

どういうことなのか? 基本的にレセプトの流れは以下のようです。

 診療→レセプトを基金に提出→基金で審査→保険者へレセプト提出

 保険者で資格関係を審査(ここで診療内容もチェック)→基金へ再審査請求 

 基金で再検討→医療機関へ減点通知
 

2000年4月に発熱とのどの痛み、だるさを訴えて来た患者さんがいました。

そこで、このような処方をしました。

  ツムラ小柴胡湯加桔梗石膏エキス顆粒 4g
  ツムラ葛根湯エキス顆粒 7g

  L-ケフラール 750mg

すると、4日後に良くなってきたが、咳すると痛みがある、ということで、

  同様処方と
  咳止めを2日分追加しました。

5月はじめにレセプトを提出し、審査も通り、支払いもなされました。

それが、11月始めに基金から減点した旨の通知が来ました。

保険者が診療内容をチェックして再審査を請求し、基金の再審査で減点と決定したのです。この基金の再審査が正しいかといえば、必ずしもそうではないのです。
間違うこともあるのです。

減点は、葛根湯7g が過剰であるという理由で、葛根湯の薬価80円×8日分(社保本人なので保険者の負担は512円)でした。

512円くらいの減点で、ごちゃごちゃ言うのは・・・まあ、読んでいただければおわかりになります。

今回、この減点に関して、再審査請求を当院もしたのですが、保険者(シャープです)のレセプトチェック係へ以下の文面をファックスしようとして、シャープの健保に、ファックス番号を教えて欲しいといいましたところ、

「医療機関からの交渉には応じません」

ということで教えてもらえませんでした。

こちらで、「交渉ではなく、チェックする係りの人に、勉強してもらいたいための情報提供だ」 と話しても聞き入れてもらえませんでした。

それ以上やりあって、血圧が上昇して脳出血になるのも馬鹿らしいので、一応、本社宛てにファックスしておきましたが、はたしてとどいたのやら?

その内容を以下に記します。

シャープ 健康保険係 御中
  レセプトの内容をチェックする係りの人へ

平成12422日初診の「扁桃炎」です。

葛根湯7g 小柴胡湯加桔梗石膏4g を診療実日数2日で8日分処方したところ

理由B(過剰)ということで、葛根湯7g を減点されました。

これは、平成124月のレセプトなので、保険者からの再審査請求で減点が認められたものと、推察いたします。

過剰ということですが、過剰の理由がわかりません。

ツムラ葛根湯は7.5g、ツムラ小柴胡湯加桔梗石膏も7.5g が常用量です。

葛根湯は7g 小柴胡湯加桔梗石膏は4g とういう量しか処方してないのですが

なぜ、葛根湯が過剰なのでしょうか? 

能書によれば、両剤とも扁桃炎は適応になってます。

葛根湯は葛根・麻黄・甘草・大棗・桂枝・芍薬・生姜で構成されています。
主に発熱性疾患の初期や、急性増悪期に使用し、発汗を促し、痛みをとるとされています。

小柴胡湯は柴胡・半夏・黄ゴン・人参・大棗・甘草・生姜で構成されています。
主に発熱性疾患の長引いたときや、悪寒と熱感が交互に来るような時に使用されます。

桔梗石膏は桔梗と石膏で構成されており、消炎作用と排膿作用があります。

小柴胡湯加桔梗石膏は小柴胡湯に桔梗石膏を加えた方剤です。

  葛根湯と小柴胡湯(加桔梗石膏)の意味は、柴胡桂枝湯の意味と似ています。
柴胡桂枝湯は、桂枝湯と小柴胡湯の両方の病期(軽い寒気もあるが、消化器症状もある発熱性疾患の時期)の薬です。

小柴胡湯と葛根湯の両方の病期(桂枝湯を使うときよりも強い炎症がある場合で、小柴胡湯の症状もある時期)には葛根湯と小柴胡湯を組み合わせた処方となります。

小柴胡湯加桔梗石膏と葛根湯の組み合わせは、上記組み合わせよりも消炎作用が強くなり、扁桃の炎症にもより効果的です。
   
柴葛解肌湯(柴胡・葛根・甘草・黄ィ・芍薬・麻黄・
    桂枝・半夏・石膏・生姜)
      という、大変似たような方剤が昔からあります。

このレセプトの患者さんには、2回の受診で、抗生剤を常用量で合計7日分、上記漢方薬を合計8日分処方されております。
そのほかには、アズノールST と、「咳が出るとかなりのどが痛む」というので、鎮咳剤を2日分だけ処方してあります。

この組み合わせが過剰ならば、一般の総合感冒剤(私は殆ど使用していませんが)を使用時に、さらに炎症の強いときに抗炎症剤を併用することは過剰ということになると思います。

上気道炎、扁桃炎、気管支炎などは、患者さんの抵抗力の違いで、症状は軽重さまざまです。それを同じ総合感冒剤で治療するという安易な方法をとれば、私も苦労しないですむのですが、やはり、患者さんの症状や体力に合わせて、治療をすることになると、葛根湯と小柴胡湯などの組み合わせが必要になるのです。

この組み合わせが過剰と考えられる唯一の理由は、生薬が、生姜・大棗・甘草の3生薬が重複するということだと、考えます。

これは、エキス剤ですので、多少の重複は仕方ないのですが、

葛根湯 7種類、小柴胡湯加桔梗石膏 9種類の合計13種類の中の 3種類です。

しかも、常用量を合剤してないわけですから、過剰ではないと思います。

  小柴胡湯は常用量の50%強、葛根湯は常用量の9割強の使用ですが、それがどうして過剰なのか、納得できませんので、再審査請求をいたします。

以上の再審査請求を、栃木県の支払い基金に今月請求しました。

来月の、県の保険委員会でこの問題を話し合うことにもしています。

これは、漢方を良く知らない審査員が、シャープからの再審査請求を見て、減点したので、完全に審査の間違いです。

理由は、上記でおわかりですね。今まで同じ処方で問題は無かったのですから。

つまり、量的には過剰ではないし、生薬のダブりも少ないです。

よくなされる組み合わせは

小柴胡湯(加桔梗石膏)と葛根湯
小柴胡湯と桂枝湯(柴胡桂枝湯という方剤がありますがその量を変える場合)
麻黄湯と桂枝湯
麻黄附子細辛湯と桂枝湯 

などがあります。

以上で明らかなように、症状によりさまざまに組み合わされることを知っておいてレセプトをチェックされることをお願いします。

たった500円位の減点で、このように抗議しますのも、

この、保険者からの再審査請求が認められたら、健康保険による漢方治療が出来なくなるからです。

 

 保険者も、組合員の命、健康を守るのが使命のはずです。

 無駄な医療費を削減するのは必要です。

 しかし、患者さんの一人一人の症状に合わせて、治療するというのが無駄であるはずはありません。

 漢方薬は、保険から目の敵にされますが、本当にそうでしょうか?

 風邪症状なら、馬鹿の一つ覚えみたいに、皆、総合感冒剤と消炎鎮痛剤と胃薬と抗生剤の組み合わせ、の方が無駄じゃないですか?

 その組み合わせで治る人もいますでしょうが、ちょっと胃腸の弱い人や、合併症を持った人はかなりこじらせるわけです。すると、余分に医療費がかかることになるわけですね。

2000116
          戸村医院  戸村光宏
 

 さて、どうなることやら??

 これが減点されたら、急性発熱性疾患に漢方治療は行えなくなりますね。

 ところで、シャープのノート型パソコンのメビウスは、栃木県の医師会がネットで連携するツールの一つに選定されて、私も持ってるんです
 で、便利に使ってるんです。出先で、いろいろ画像を見せたり、勉強会で使ったりね。

 あ、関係ない話ですね。

 事後の報告は、数ヶ月先になります。

 そうでないと、再審査の結果がでないんです。

 ね、だから、その前に、保険者に、情報を知らせておかなきゃならないんです。

 だって、その間、ずっと減点されっぱなしになるか、

 シャープの保険者から、基金へ再審査請求が続くことになるんですからね。

   こういう事情を話そうと思ってたのに、ぜんぜん、取り合わないって言うのも

   おかしな話です。
  

       
シャープ
健康保険と本院は相性が悪いのか??

 1999年から高血圧症とビラン性胃炎、気管支喘息などで治療していた患者さんがいました。
 たびたび頸肩腕症候群のため肩や腕に痛みを訴えることがあり、ときおり痛みを訴える局所に注射をしていました。

 2000年6月に腰痛を訴えました。
 ビラン性胃炎があるので鎮痛消炎剤の内服ははばかられますので、以前肩にしていた注射を腰にしました。

 この月は、6回受診して左右の腰に8回注射しました。

 病名は6月5日付けで「腰痛」としました。
 病名が多くなるので肩の痛みの病名は削除しました。

 2001年4月、栃木県社会保険支払基金から
「左右の肩の部位への注射を4回減点する。理由は適応外」
という『再審査等支払調整額通知票』が送られてきました。
減額は1360円です。

 シャープ健保組合がレセプトをチェックして
「肩の痛みをなおす注射はやってはいけないんじゃないの」
と、社保基金に再審査を請求したのが、認められたわけなんです。

 あれれ、どうして減点なの?
 しかも、もう10ヶ月も前のレセプトの減点なんて。

 カルテを穴の開くほど眺めていて、理由がわかりました!

 当院のレセプトの入力ミスだったんです!

 この患者さんには、それまでたいてい肩の部分に注射をしていたのに、たまたまこの月は腰に注射をしたわけです。
 で、レセプトには左右の腰に注射をしたというわけですが、2回だけ注射部位を左右の肩となっていたのではないかと、推定しました。

 だから過剰の注射ではなく、適応外ということで減額してきたのです。

 最初にレセプトを審査した段階で、チェックされていれば、このレセプトは当院へ返戻されていたはずです。
「腰痛なのに肩に注射した理由をお知らせください」
などという付箋付きでね。

 もちろん、当院のレセプトチェックも甘かったかもしれませんが、たまたまこういうことはありうるわけです。いつも肩が痛いというイメージのある患者さんですしね。

 いつまでこんな不毛なことを繰り返すのでしょうか?

 もういいかげんこのへんで、レセプト審査もコンピュータで行い、はじかれたものを審査員が審査するというシステムにならないものでしょうか。

 そうすれば、病名と一致しないものは機械的にはじかれますので、審査員の見逃しもなくなると思います。
 なにしろ一人の審査員が審査するレセプトの枚数が膨大すぎます。

 あるいは、前に書いたように、月単位でなく日単位で診療内容を基金にオンラインで送るというシステムになると、紙も使わずにすみますし、チェックも日単位で行われますし、そうすれば10ヶ月もたって減額するなんていうこともなく、疑問点は時間をおかずに問いただせますし、いいことずくめだと思うのですが。

 それにしても、シャープと当院は相性が悪いようですね。

 でも、ちょっと考えれば
これは腰と書くのを間違えたな」とわかるのに。
 なぜかといえば、保険組合では前の月とかその前の月とか、レセプトをつき合わせてチェックしているのですからね。

 まあ、シャープ健保組合としては、組合員が必要な医療を受けるよりも、レセプトのミスを見つけて
「あ、見つけた! 医療費儲けた!」
ということに快感を覚えているということなんでしょうね。

 今回は、ひかれものの小唄でした。