三方一両損

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ほーむ

 
 小泉総理はとてもお話が上手です。
 
 真実を語りかけてくれるように感じます。
 
 私も、そうだそうだ! と、応援しております。
 
 ところで、来年度の医療保険制度の改訂を三方一両損と言っておられますが
 
 それは違うだろう、と私は思います。
 
 どうちがうのか、三方一両損のお話から。

三方一両損
これは落語ですね。大岡越前が出てきます。

三両入った財布を拾った江戸っ子の左官のショクニンが、落とし主に届けると、落としたほうもショクニンで江戸っ子なので、意地を張って受け取らない。
「一旦フトコロから出たものは受け取れない」というわけで、けんかになる。
大家さんが困って、奉行所に訴え出る。
大岡様は、三両をあずかり、懐から自分の一両を取り出し、四両として、ふたりに二量づつ受け取らせる。
「落としたほうは三両のところ二両戻ってきたので、一両の損、
 拾った者も黙っていれば三両になったところを二両なので、一両の損、
 この大岡も、自分の懐から一両を出したので、一両の損。
 これで、三方一両損である」
そのあと、二人は感心であるとほめられて、ご飯をご馳走になる。
そのとき、そんなにあわてて食べるな、などと注意されて
「おおかわくわねえ、たったのえちぜん」

 というわけで、テレビのニュースなどで、
 
 医療機関は診療報酬の減額で一両の損、
 
 患者さんは自己負担が増えて一両の損、
 
 保険者(保険組合)も一両の損(?)などと言ってますが、
 
 保険者は損などしないでしょう? 保険料が上がるのだから。
 
 本当は、ちょっと違うでしょう。大岡様が損してませんからね。
 
 大岡様(政府)がお金を出して(政府が拠出する金額は年々減少してるんです)
 
 これからは、この位しか出せないから
 
 医療機関の診療報酬はこの位削減させてくれ、
 
 患者さんの自己負担もこのくらいは増やさせて欲しい
 
 と、言ってくれれば、「三方一両損」ですね。

 不況下では、医療費は削減されてもしかたないと、個人的には思っています。
 
 でも、医療機関は儲かってるぞ! 医師会の息のかかった議員が患者の自己負担の増加を
 
 とめにかかってるぞ! というのはちょっとおかしな話だと思います。
 
 国の財政が厳しいのはわかっています。
 
 苦しいから、これだけにしてくれ、と頼めば良いじゃないですか。
 
 それを、まず、診療所は儲かってる、不正請求はし放題、なんていう話題をマスコミに提供し
 
 て、それじゃ診療報酬を下げましょう、なんていう非常に卑怯な手法を、旧厚生省はとってき
 
 ました。
 
 今回も同様ですね。

 ところで、医療機関の名誉のために客観的な資料を提示します。

 2000年のWHOの発表によりますと
 
 健康部門で、健康寿命(健康で長生き)は世界1位
 
 健康の平等性 は世界3位
 
 健康達成度の総合評価は世界1位
 
 ということになっています。
 
 ご存知でしたか?
 
 OECD(経済協力開発機構)によりますと(1998年)
 
 総合医療費と国内総生産との比較では世界18位となっています。
 
 つまり、世界で1位の健康達成度を18位の医療費でまかなっているわけです。
 
 そういう評価は国内ではないのは何故なんでしょうか?
 
 やっぱり、医者は金儲けばかり、医者の出す薬は無駄な薬ばかり、検査も儲けのためばかり
 
 で、やってるんだというイメージが、マスコミ関係者にはこびりついてるんでしょうね。
 
 ですから、決してプラスの評価はしないんです。

 こういう現実も知っておいて欲しいと思います。

 医療保険はたしかにピンチになりつつあります。
 
 しかし、医療費は伸びるのは当たり前なんです。
 
 だって、70歳以上の人口は増えつづけますからね。
 
 人口が増えれば病人が増えます。
 
 病人が増えれば医療費が増加します。
 
 医療機関の収入も増加します。
 
 それは、医者や看護スタッフ、事務等の仕事が増えるのだから、仕方ない面もあるんです。
 
 70歳以上の医療費が増加したら医療機関が悪いのだから、次年度は減額する、という
 
 とんでもない話があります。
 
 70歳以上の人口が同じであればそれは納得ですが、年々患者数が増加するのに、
 
 どうして医療機関が悪いのでしょうか??

 もうちょっとましな考えは無いのでしょうか??