医学怪文書大全〜ハウツー物の館〜

 目次へ戻る

                   中毒学専科
                                                     2001年4月(大全その33)

 最近薬物中毒と思われる症例を経験した。専門病院へ搬送したのだが、
最新の中毒学を知っておくべきと『中毒学専科』を軟膏堂から購入した。
 筆者は毒多亜乃雨という。様々な中毒の態様と対策が述べられている。
 医学書としてはユニークであり、序文には
《キノホルムとクロロキンと蚤の殺菌剤の間にある共通点を見いだすこと
が、中毒理解の早道である》といい、筆者は広い視野で判断することを求
めている。その上、各論は各種中毒が網羅されていて、実用的である。
 ニコチン中毒の項をみると
《経口摂取による急性中毒と、経気道による慢性中毒があり前者は乳幼児
に多く、後者は成人に多い》とある。
《前者は摂取した本人が死に至る場合もあり、周囲は大いに心配するが、
後者は周囲が大いに迷惑する》なるほど視野が広い。
 睡眠薬中毒のページを開く。
《不眠を訴える患者の大部分は眠っていることに医師は気づくべきだ。
そうすれば睡眠薬中毒は発生しない。
 四十年ほど前には、ブロバリンで年間三千人以上自殺していたので、今
でも家族が、睡眠薬を十錠も飲んだといって、葬儀の準備をすることがあ
る。ブロチゾラムなどは、ラットでさえ二万錠も飲んでも、死ねる保証は
ない。 最近自殺を試みた一人は、一錠づつ飲んでいるうち、ぐっすり
眠ってしまったため未遂に終わり、別の一人は、PTP包装から錠剤を
取り出しているうち腱鞘炎になり、整形外科に通院中である》
 その他、多種多様な中毒が取り上げられている。変わったところを数例
紹介する。
 下剤中毒《高齢者に多い。高齢者は複数の医療機関で治療を受ける機会
が多く、その都度便秘を訴えるものだから、下剤を大量に服用するように
なる。ついには下痢をしていないと不安を感じるようになる。医療者は心
すべきである。》
 活字中毒《印刷インキに含まれるジエチレングリコールが原因という人
もいるが、昔の謄写版刷りからワープロ、コピーまで、字が書いてあれば
じっくり読んでしまうので、字そのものの中毒と思われる。この文を読ん
でいる読者はかなり重症の中毒者である。》
 この本さえあればどんな中毒が来ても対応できると心丈夫に感じていた
ら、数十の医療機関をはしごする「医者中毒」の患者が来院した。この本
には載っていないのでたいそう往生したことを告白せざるを得ない。
  
       挿し絵を見たい方はここをクリックしてください。
      
*参考
文献:『中毒百科』内藤裕史著 
  *内藤先生の中毒百科は、読み物としてもたいそう興味深い本です。
   1991年の出版ですが、考え方は大いに啓発されます。
   医学怪文書大全〜ハウツー物の館〜

 目次へ戻る