漢方で元気!
日本東洋医学会関東甲信越支部
栃木県部会 会長 粕田 晴之
(国際医療福祉大学教授)
21世紀の医学教育に東洋医学が導入されることになりました。
日本東洋医学会・栃木県部会は、毎年、県部会会員対象の「学術集会」を開催して参りましたが、昨年10回の節目を迎えたのを機に、一般市民対象の「公開講座・漢方で元気」の開催を企画いたしました。
第一回目の講座は、テーマを「漢方で元気」と題しまして、身近な病気 「不眠症」・「花粉症」・「冷え症」・「頭痛」を取り上げました。4人の先生方にご専門の立場からご講演いただきます。また、あらかじめ頂きました「漢方相談」を中心に、ご質問に回答させて頂きます。
公開講座を通じ、市民の皆さまに「漢方の特徴(下記参照)」についてご理解を深めて頂き、「生活の質・QOL」の向上にお役に立つことができれば幸いと存じます。
「漢方で元気!」、でお過ごし下さい。
1.漢方は個人個人の体質に合わせた「証」の医学
漢方では、心身全体のバランスがとれた状態が健康であり、何らかの原因でバランスの崩れた状態が病気であると考え、どこがどうアンバランスなのかを察知するのが“診断”でバランスを回復させるのが“治療”となります。
したがって、
(1)病気の部分だけでなく個人全体を診て(診察し)、個人の体質や体調(「証」)に合わせて処方します(治療します)。そのため、同じ症状であっても、身体所見・体質の相違などによって異なった漢方製剤が処方されます(同病異治)。
(2)病邪(例えば、かぜウィールス・細菌・がん細胞)そのものを攻撃するのではなく、自然治癒力の回復を主眼としています。
2.漢方の予防医学的アプローチ「未病を治す」
漢方には「未病」という概念があり、「黄帝内経」「傷寒雑病論」などの古医書には「上工は未病を治す」という記載があります。“上工”とは上手な医者、“未病を治す”とは「未だ病ならざるものを治す」ということで、症状が現れて病気になる前に予防したり、わずかな異常をとらえて治療するという意味の他、すでに発病していても更に進行したり他の臓器に及ぶことを防ぐ治療を行う、という意味があります。
このような考えに基づく漢方では、西洋医学的検査には表れない心身の異常をとらえて治療することができます。
3.漢方は複数の生薬の組み合わせ
西洋薬は精製された単一の薬剤であるのに対し、漢方は何種類かの生薬の組み合わせで出来ています。一つの処方で複数の症状を改善することができます。
日本東洋医学会学術教育委員会編「入門漢方医学」南江堂 より抜粋
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