名作どうわ選 

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2005/11/13

 天女の羽衣です。

天女の羽衣というお話があります。
民話ということでしょうか。


三保の松原の松の枝に美しい羽衣が掛けてあるのを見て
漁師の若者が持って行ってしまおうとするわけです。
水浴びをしていた天女が返却を申し出ると、拒否されます。
しかたないので「天女の踊りを見せるから返して欲しい」と言って
やっと返してもらうという話です。
天女にとっては、羽衣がないと宙を飛べないので、
天に帰れなくなってしまうというわけで、大変だったらしい。

ということで
「ただよう気品、語りかける愛の歌」シャンソン界のカリスマ
金子由香利の、メロディーがあるようなないような、ささやくような、話すような、
あの有名な
『再会』をご存知でしょうか? 松尾和子の『再会』ではありません。
 街角で偶然出合った男性。昔、なんやかやあった男性だ。
 ショッピングだろうか。連れの女性もいる。
 
「あら、ボンジュール。久しぶりね・・・」

今回は、金子由香利さんとおぼしき方の「天女の羽衣」をお楽しみください。
熟成されたヴィンテージ・ワインに似て、
芳醇な世界にいざなう傑作ベストです。

            (この色の太字の部分はCDのゴールデン☆ベストの惹句から)
知らない方は、ハスキーな声でささやくように音読していただければ幸いです。

 
       天女の羽衣    唄 金子由香利の偽物
                            (薮野菜加太・誤訳詞)

あら ひさしぶりね
その後、お変わりなくて?
あれからどれくらいたったかしら。
返していただいた羽衣・・・
今でも大切に持ってるわ。

わたしは、変わったでしょ?
あれから、旅をしたわ。
だって、神様にしかられたんですもの。
いろんなところに行かされたわ。
・・・どさまわりよ。

おかげさまで、少しは大人になったわ。
もう、裸で水浴びなんてしないわ。
松の枝に羽衣をかけることもないの。

あぁ、わたしっておしゃべりね。
引き止めてごめんなさい。
あんまり、にくたらしくて声をかけたのよ。

 

あの方、奥さんでしょ?
とても不細工な人ね。
あぁ、わたしにちっとも似てないわ。
こっちを見てるわ。
わたしをどう思うかしらね。

昔は、返してもらいたくて
にこにこして踊ったけれど
本当は、うらんでいたのよ。
盗まれたものを返してもらうのに
本心から微笑まないわ。

でも、今は、本心からにこにこしているの。
あなたの奥さんに
誤解していただくために・・・ね。

悪気はなかったっていうのね。
でも、いやらしい目的だったでしょう?
あなたの目つき、変だったわ。
・・・今も・・・変わらないのね。

あぁ、わたしっておしゃべりね。
引き止めてごめんなさい。
あんまり、にくたらしくて
お話・・・したかったの。


今でも、あなたを、
引っかいてやりたいと
思って・・・
いるの・・・よ〜・・・

おしまい

金子由香利さんのCD持ってます。
一枚だけね。
「時は過ぎて行く」の始まりの部分が好きです。
「桜んぼの実る頃」フランス語の歌詞の間に日本語の詩の朗読があります。
とても良いと思います。
私は涙が出そうになります。
「再会」ぐっと来ます。
男の立場からすると、う・う・う・・・となってしまいます。
シャンソンというジャンルは難しいと思います。
越路吹雪が有名ですが、あ、恐いな、と感じることもあります。
上手なんでしょうが。

下手な歌手だと、なんだかとても匂うような、くさい唄になってしまいます。
金子由香利さんは、そこのところを逆手に取っているみたいで、
「再会」なんか、もう歌じゃないですね。
お芝居ですね。とてもいいです。
上記以外の他の曲はあまり聞きません。

しかしですね、この民話のことですがね、
三保の松原が美しいので、水浴びしたというのは良いとして、
この漁師の若者はですね、一体、なんなんでしょうね。
松の枝に掛かっているものを勝手に自分のものにしちゃ、ダメでしょう。
窃盗です。
もし地べたに落ちていたなら、警察に届けるべきです。
そうじゃないと拾得物なんとかという法律に違反します。
ねこばばともいいますが。
この民話は、各地にあるらしく、
「羽衣を返して欲しければ女房になれ」
なんていう不届きな話もあるそうです。
それで、女房になっちゃった天女もいたみたいで、
まあ、当時の道徳観というものは、どんなもんなんでしょうかねえ。
こんにちの方がひどい?
そうです。そのために、童話って大切にしなくちゃね。

いや、日付を見ると一月も童話作ってなかったんですかねえ。
ひさしぶりということで、こんなところでよろしく。
           藪野菜加太