名作どうわ選 

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2005/10/5

 オオカミと七匹の子やぎです。

 One For My Baby という歌があります。
 Make it one for my baby
 と言ってますから
「彼女にひとつ作ってくれ」とでも訳すのでしょうかね。

    悪いね、一杯作ってくれ。
    (夜中、バーには一人の酔っ払いとバーテンしかいない)
    それから俺の女にもひとつ。
    ここにいないけどね。
    いろいろイキサツがあるんだよ。
    おれは、ま、詩人なんだな。

 なんていう酔っ払いの繰り言が続くんだけど、
 なんだか深い味わいというか、
 バーの片隅が舞台なんだけど、
 なんだか、哀愁ただようというか、
 そういう一幕芝居のようなジャズ。

 英語だから雰囲気しかわからないのですが
 綾戸千絵が唄うと、女性がバーテンに話しかけるみたいで、これまたいい。

  ということで、オオカミが歌います ”One For My Baby”

 
オオカミと七匹の子やぎ    唄 オオカミ(F.シナトラ盤)

あと15分で3時か。

もう、片付けてもいいぜ。

どうせ、客は俺だけなんだから。

ああ、その前に俺の話を聞いてくれ。

おごるからさ。

それから『俺の彼女』にも一杯作ってやってくれ。

まあ、ここに居るわけじゃないんだけど。

 

俺はちっとも悪いことしたつもりはないんだぜ。

そりゃ、ネコなで声はしたさ。

この地声じゃ、誰もドアは開けてくれやしねえや。

へへ、足も白く染めたがね。

だけどさ、餌なんだぜ。

俺にしてみれば、あれは食事っていうわけさ。

子やぎの丸呑みってのはうまいしねえ。

 

ま、へまはやったがね。

俺は今、へこんでるのさ。

いつものように曲をかけてくれ。

泣けるやつがいいな。

 

餌の母親が『あいつ』だったとは俺も気がつかなかったさ。

『どじ』と言やあ『どじ』だがね。

あいつと俺はいい仲だったんだ。

『俺の彼女』ってわけだ。  

ほれてたってことさ。

言っとくけどあんたにゃ『守秘義務』があるんだぜ。

職業上知り得た情報は漏らしちゃいけねえのさ。

 

『俺の彼女』に一杯作ってやってくれ。

まあ、ここに居るわけじゃないんだけど。

 

『女は魔物』だね。

いい表現だろ。俺は詩人って言われてるんだ。

時計の中にもう一匹隠れていたのを見逃しちまってさ。

おかげで俺だってことがすぐばれちまったのさ。

 

店、閉める時間だろ。

わかってるんだ。

ありがとうよ。話を聞いてくれてさ。

 

しかし、見てくれよ、この腹。

石ころだらけなのさ。

寝ている隙に子やぎを取り出して、代わりに詰め込みやがった。

そうさ、女は魔物なんだ。

歩くたんびにごろごろ音がして、うるさくってしようがねえや。

井戸じゃおぼれそうになるし。

体外衝撃波結石破砕術っていうやつを予約してるんだがね。

知ってるだろ。尿管結石なんか手術しないで粉砕しちゃうやつ。

 

『俺の彼女』に一杯作ってやってくれ。

まあ、ここに居るわけじゃないんだけど。

 

あ、そう、最後にもう一杯作ってくれ。

この街ともおさらばなんでね。

予約した病院、すごく遠いんだ。

     おしまい(今回はオチはなし。すでに井戸に落ちた)

オオカミが、七匹の子やぎのお母さんのふりをして
戸を開けさせて、丸呑みしちゃうお話。
オオカミは残酷ですね。しかし、
石を詰めて縫ってしまうお母さんやぎも、相当なもんです。
ジャズ。
スタンダードがいいな。
うるさくないやつ。
One For My Baby は余り知られてないかもしれません。
私は、綾戸のおばちゃんのCDで知りました。
なんて唄ってるんだろう?
ネットで、見つけました。
いい雰囲気じゃないの。意味わからんところも多いけど。
綾戸のおばちゃんは、She is coming と最後に2,3回つぶやきます。
自分に、今、来るところなんだからと言い聞かせて
「彼女に一杯作っといて」と言ってるのか
どうなのか??
ま、よっぱらいの繰り言なのでしょうが。
フランク・シナトラは、最後に long long と繰り返し
6回目の long の後に the road と唄っていますが、これまた意味深。
ケニー・GのサックスのCD(GREATEST HITS)に
All the way/one for my baby (and one more for the road)
というのが収録されていて、シナトラが唄っています。
So make one for my baby と唄っています。
歌手によっていろいろと違うものですね。雰囲気も。意味も。

いや、日付を見ると一年以上も童話作ってなかったんですかねえ。
ひさしぶりということで、こんなところでよろしく。
           藪野菜加太