名作どうわ選

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 2002/8/5

 「牛と蛙」です。

  牛の大きさはこのくらいか、と言ってお腹を膨らませているうちに
  とうとう、お腹がパンクしてしまったというお話です。
  イソップ物語です。
  なにしろ昔のことですから、お腹が破裂しては助かりません。

  では、お通夜での、和尚さんのお話を聞いてください。
  

  牛と蛙
                 某寺のご住職 
 
え〜、先ほどのお経は、仏様になられた故蛙が、無事にお釈迦様のもとに行き着くことができますようにという案内のありがたいお経でございます。

例えば、まず、今ごろはちょうど三途の川に到着したところでございましょうから、三途の川では舟になり、無事あちらの世界にお届けするのです。

  (私語:泳ぎは達者だったよなぁ。舟なんかいらねぇってんだ)

え〜三途の川というものは、なかなか急な流れでしてな、なまなかな泳ぎじゃ向こう岸まで渡りきれません。
渡りきれないと、こっちへ戻ってきてしまいます。

  (私語:だったらいいじゃねえか、なあ。いきかえるんだから。)

え〜、え〜、戻ってきても生き返りません。中空をさまようわけで、成仏できないというわけでしてな。
死後のお話をしているわけですから、くれぐれも私語はおつつしみ下さい。

今夜は、お通夜ということでございます。
こうして、お通夜の供養をするといういことは、故蛙が安らかにあの世で生活をなされるようにという、とても大切なことなのです。

くれぐれも、お静かにお願いいたします。

故蛙は、大変な子沢山でありまして、今夜もなかなかご焼香が終わらないというありさまでした。

生前は、なかなかお子様方との会話を大切にされておりまして、まさに、現代の母親の鏡でございました。

牛はどのくらい大きいか、ということで、お腹を膨らましたところ、突然、お腹が破裂してしまい、ついにかえらぬかえるになってしまったわけです。

でも、これもお釈迦様が下さった、故蛙の寿命なんでございます。

だれも恨んではいけないのであります。

前日、なまずのひげに突っつかれて、お腹にちょっと傷がついていたのが悪かったと、お医者様が言われておりましたが、それも因縁なのでございます。

え〜、ここで、戒名のご説明をさせていただきます。

戒名は「蓮葉院喧騒水田腹大姉」とお付けいたしました。
え〜、れんよういんけんそうすいでんふくだいしとお読みいたします。

本来は、お釈迦様のお弟子になるときの名前ですので、生前から持っていなくてはならないものなのでございますが、たくさんの戒律を守らなくてはなりません。

不邪淫とか不慳貪とか守れますか?

  (私語:つっけんどんなら守れるな。)
  
そこで、今、お釈迦様からいただいたというようなわけなのです。
意味でございますが、牛の真似をしたのが蓮の葉の上だったので蓮葉院。

  (私語:ええ! はすっぱな女っていう意味じゃなかったのかい?)

喧騒というのは、鳴くのが非常にうまかったということで、人間にとっては、さぞうるさかったろう、ということで、喧騒。
また、主たる住まいが水田であったということで水田。
そして、お腹を大きくしてお亡くなりになったということで、腹大姉。

決して、お布施を多くいただこうというので大姉とつけたのではございませんから、お間違えの無いようにお願いいたします。

え〜、それから、ここに持ってまいりましたのは色紙でございます。

お通夜の席で披露させていただき、故人の供養にいたしたいと思います。

「古池や かわずふくらみ 破裂音」

  (私語:なんだか聞いたようなどどいつじゃねえか?)

え〜、これは俳句ということで、よろしくお願いいたします。

では、お清めということで、ご馳走になりますかな。

これは? ええ? ヤゴの佃煮とボウフラの酢の物?

いえいえ、近頃じゃ、ナマグサ物でもかまいませんよ。

お腹に入って消化されればみな一緒なんですから。

ナンマイダブ・ナンマイダブ

おや、おいしいですな。そちらは? 毛虫の池作り?

おしまい。

特定の宗教や、お坊さんを揶揄したものではございません。
これは、蛙の世界のお話なんですから。
 
今回のはちょっと面白くないですね。夏の暑さのせいでしょうか?
それとも、私が真面目になっちゃったんでしょうか??
 
                            藪野菜加太