出羽「う〜ん、女郎屋へでも入り浸ってるんじゃないですか」 |
杉山「ええ、ただいま、不適当な表現がありました。おわびいたします。
ええ、ただ今入った情報によりますと、蛇とはやりたくないといって、
廃業して国へ帰ったのだそうです。これは驚きましたですねえ」 |
出羽「以前、『なめくじら』が『水戸泉』と対戦したときに、塩の下敷きにな
って行方不明になったこと以来のチンジですねえ」 |
杉山「ええ、ただいま、不適当な表現がありました。おわびいたします」 |
館内一段と大きな歓声。 |
杉山「ええ、東から金太郎が入場してきました。例の腹掛けははずしていませ
んが、注目のまわしはつけております。今、どっかと土俵下に腰をおろし
ました。もうすでに顔は真っ赤です。金時さんみたいです」 |
出羽「金太郎は、将来金時になるから『あたりまい』でしょう」 |
杉山「白房下には、すでに『森の熊』が腕組みをしてすわっております。
目がらんらんと光っております。
呼び出し『こん吉』が両力士を呼び上げます」 |
呼び出し『こん吉』ふた声づつ両力士を呼び上げる。
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出羽「いい声ですねえ。『よびだしや 花の土俵の 隠し味』
これは、呼び出しが塩なんか用意するんですね。だから・・・」 |
杉山「紫の房の軍配を持ち、浅黄色の装束を身につけ、立行司『木村狸の助』
がさばきます。場内は興奮のるつぼです。
そこここからキンタローの掛け声が聞こえます。
おや、今、土俵下の九重勝負審判が金太郎になにか注意をしているようで
す」 |
出羽「あれは腹掛けをはずせと言ってるんでしょうね」 |
杉山「そうですか。今、腹掛けをはずしました。
なす紺のまわしをぽんぽんとたたきました。
さあ、制限時間いっぱいになりました。さがりをさばいた両力士。
立行司『木村狸の助』が軍配をかえしました。
金太郎、頭から当たりました。もろ差しです。金太郎もろ差し。
熊、金の両腕を抱え込みました。金、寄った、金寄った、熊、こらえた、
金、がぶっています、金太郎、元結がきれて、ざんばらになりました。
大童です。」 |
出羽「金太郎はもともと髷は結ってません。大童ですよ」 |
杉山「熊こらえて、土俵中央へ寄り返しました。すごい相撲になりました。
まさに大相撲になりました。両力士のおなかが大きく波うっています。
あ、森の熊、強引に寄っていきます。熊、寄った。熊寄った。金棒立ちで
す。金棒立ち。土俵際に棒立ちです。
すくい投げ〜! 金太郎の勝ち〜。
金太郎、すくい投げで勝ちました。土俵際で、森の熊が右から外掛けをか
けようとしたところを、金太郎が左からすくいますと、物の見事に、もん
どりうって、土俵下に転び落ちました。
出羽錦さん、いい相撲でしたねえ」 |
出羽「そうですねえ。相撲史に残る名勝負ですねえ。
森の熊の足が短かったので、金太郎に届かなかったんですね。
空振りしたところを、すくわれたので、見事に決まったのですねえ。
『そとがけに 悔し涙の 短か足』」 |
杉山「では、金太郎が優勝したことをお伝えして、足柄体育館から、このへん
で、お別れいたします」 |
出羽「失礼しました」 |
杉山「JOZK」 |