ほーむ     猫のおはなし

ペペ レクイエム

  ペペ

 チビ(オス)の次に生まれた長女。
 長女らしくわがままで、弟妹たちにいじわる。
 子供時代、外猫でもあったので、かなりワイルド。
 家の中に雀が入り込もうものなら大変な騒ぎ。
 雀をくわえて家中走り回る。

 食事時、
 早く食べ終わるオス猫に横取りされないよう妹たちは
 別室で食べる。
 ぺぺはオス猫と同じところで食べる。
 一段高いワゴンのうえで。

 病気になったら、人間と一緒のダイニングキッチンで。
 

                                                                          2009年12月21日
 今日ペペがさよならした。
 12歳だ。
 猫としては、平均寿命なのだろうか。

 黄疸になったのは3ヶ月前。
 食事を残すようになり、ほとんど食べなくなったので、獣医さんに見せた。
 黄疸があり、GPTが1000以上あると告げられた。
 高齢なので治る可能性は低いということだ。
 それでも、点滴をされると食欲が出るらしく、普段と同じくらい食べることもある。

 外猫の経験も少しはしたことがあるせいか、晴れた日には外へ出たいそぶりをみせるようになった。
 勝手口から外へつれて出たとき、のびのびと伸びをして、背中を地面にこする。
 元気な頃みたいにごろごろと何度もこするわけではない。
 それから、家の周りをゆっくりと歩く。
 枯れかけた芝にいなごがいた。
 何回かの散歩中に、いなごを二匹も殺してしまった。
 病弱の猫に殺されるのだから、いなごもそうとうヨロヨロだったに違いない。
 ここ数日、外へでてもうずくまるだけだった。
 体重は減り続け、とうとう半分の1.6Kgになってしまった。
 それでも抱いて行き、庭の芝生の真ん中へでおろすと、芝がちくちくするせいか、歩いて石畳へ戻ってくる。
 気のせいか風が吹くと、よろめくようだ。
 そしてまたうずくまる。
 地に落ちて色あせた枯葉が風に舞い、石畳の上をかさこそと音を立てる。
 陽だまりの中、枯葉を目で追う。
 また、抱いて家へ戻ると、しずかに居間へ戻り、コタツにもぐりこんだ。
 ペット用のホットカーペットに小さいやぐらをおいて、毛布をかぶせただけのコタツだ。
 猫が五匹、体をくっつけ合って寝る。もう一匹はコタツの外の毛布の上で寝る。
 病気になっても同じだ。

 きのうは、何も食べなかった。そして、前日 に食べたものを吐いた。
 今朝、他の猫たちは朝食を食べている。
 ペペはどうしたのか。
 コタツを覗くと、ぺぺがまだ向こうを向いて寝ていた。
 昼すぎ、ペペは頭をカーペットに落として、動けなくなっていた。
 目は開いていた。
 鼻すじを撫ぜると、すこし目を細めた。
 腹部をさわるとないた。
 気の強いぺぺがはじめて出した悲しげな声だ。
 タオルを枕にするため頭をそっと持ち上げたが、いやがるそぶりは見せなかった。
 獣医さんへ連れて行くのはやめにして、タオルで体を拭いた。
 他の猫はみな、ガラス障子の向こうの日当たりの良いサンルームで昼寝の真っ最中だ。

 3時すぎ息が荒くなった。
 間もなく日が翳り、猫はみな居間にもどった。
 たたんだタオルの上にクロが座って、ペペをずっと見ていた。
 4時、ぺぺが死んだ。

 皮下に点滴をされると、脱脂綿を絆創膏で固定。
 はじめは、なめて取ろうとしたのだが、
 絆創膏に毛がくっついて痛いとみえやらなくなった。
 それで、家に帰ると、私がはがしてやることにした。
 「ふぎゃ」と一声、抗議の声をあげる。

 芝にうずくまっていると
 イナゴが近づいてきた。
 なんと、イナゴを捕まえたではないか。
 そして、食べようとしたが、
 味覚がおかしくなっているせいか、やめてしまう。

 イナゴは死んでしまったが、
 ぺぺには反省の色はない。

陽だまりの中。

ペペの頭に紅葉を乗せてみた。
たいがい嫌がって頭を振ったりして落とすのだが
じっとしたまま。

風に舞う落ち葉を見ているだけ。

 猫を入れない部屋 に紙のように軽くなったぺぺを抱きいれ、一緒にうたた寝をしました。
 腰の辺りから、毛布の中へ入れたら、両足の間へ入り込み、すねの辺りでうずくまって寝ました。
 猫の出入りする居間の畳の上に私が寝転ぶと、たいていコロとかドラとかクロとかペレなんていう連中が体の上に乗ってきたり
 チビまでもが、足の間に入り込んだりするのですが、ペペだけは少しはなれてうずくまってるだけ。
 だから、このときは本当に久しぶりに一緒に寝ました。
 それから二日後にペペは「お出かけ」してしまいました。

 ぺぺは最後のころは、食事時、となりの椅子に座ってみたり、私の膝の上に座ってテーブルへ身を乗り出したりして
 少しばかり、人間の食べ物を食べたりしました。
 食欲が無くても、少しづつそうやって食べました。
 よくがんばったと思います。
 ペペは母猫そっくりでした。
 今、その母親と同じ庭の片隅に眠っています。