「小朝独演会」とありますが、他の噺家もでました。
ま、2列目だしね、文句は言えないか。
この日の第一席めが「平林」です。
下のほうに、談志と円生、文楽がやったらどうなのというのも載せてみました。 |
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07年2月20日に『朝日さわやか寄席』がありました。
なぜ朝日なのかというと朝日新聞が主催ということです。
那須野が原ハーモニーホールで開催されました。
しかし、このようなホールは入り口がわかりづらいのはどういうわけでしょうね。
ハーモニーホールは、もう迷路のようです。
開演時間となりました。
指定席は前から2列目でした。
お隣には、お友達の奥様が。
小朝師匠が「お客様の中で不倫している人は手を挙げて」と言った時にはドキッとしませんでした。
お友達の奥様のお姉様もご一緒でしたからね。
咳のでそうな私の為にのどあめを下さいました。おかげで、咳き込まずにすみました。
はじめに、とても若くてかわいい女の子が登場しました。
10日くらい前にどこかで初高座をすませたばかりの『春風亭ぽっぽ』さんです。
小朝師匠の三番目の弟子だそうです。
元気で、溌剌。
変な癖もついていず、初々しい高座ぶりでした。
間違えずに無事話し終えました。
落語はおなじみ『平林』
店の主人から『平林(ひらばやし)』さんに手紙を届けるように言われた字の読めない小僧さんが、
途中でどこへ届けるのかわからなくなり、道行く人に宛名を読んでもらうというお噺。
始めの人は『たいらばやし』と教え、
二番目の人は『ひらりん』と教え、
三番目は字を分解して『一・八・十のもくもく』
四番目は『ひとつとやっつでとっきっき』と教えるというたわいも無い、いわゆる前座噺です。
昔、昭和30年代に当時の金馬の『平林』を聞いた覚えがあります。
当時子供だった私は大笑いしました。
『ひとつとやっつでとっきっき』という口調が子供心をうきうきさせたのです。
ぽっぽさんも金馬さんと同じような設定で演じてました。
ここで、ぽっぽさんへのお願い。
初高座をすませたばかりなので余裕が無いでしょうが、少し話の内容を変えたほうが良いかと思います。
もう、平成も19年ですからね。
『たいらばやし』と教える人は単純にたいらばやしと思い込んでいたのかもしれませんが
『ひらりん』と教えた人は、どういう人なんでしょうね。
教える人の違いを際立たせると面白いと思います。
同じことは、その次にくるとっぴな読み方にもいえます。
『いちはちじゅうのもっくもく』と教える人は、あきらかに小僧さんをからかってるわけですので、
からかってる人物を表現して欲しいと思います。
『ひとつとやっつでとっきっき』と読む人はもっと<いじわる>だったりするので、そこのところは演りがいがありそうです。
もっとも、三遊亭金馬(今の金馬ではない、私の子供の頃の金馬さん)も、そこんところは演じ分けてはいませんでしたね。
『孝行糖』と同じように、調子よく、ぽんぽんと話を進めるという噺だからでしょう。
しかし、現在の人が聞くとなると、当時よりもみなひねくれてますので、多少工夫が必要になると思います。
落語に理屈は無用ですが、
「たいらばやしかひらりんか、いちはちじゅうのもうくもく、ひとつとやっつでとっきっき」
と大声で言って歩くということは、この小僧さんには記憶力があるわけで、
だったら『ひらばやし』も覚えていたってよさそうなのに、と昔、私が子供の頃、そう思いました。
それから、オチも、小僧さんの様子を見た人が
「気が違ったか?」(当時は<が>をぬく)
「いえ、字間違いでございます」(当時は<間>をぬく)
というもので、字の違いではなく「読み違えじゃないのか」とも、生意気な私は思ったものです。
しかし、まあ、この落語のオチは余り良くないですね。
この噺の面白いところは『ひとつとやっつでとっきっき』だと思いますので、
変な読み方を教える人の人物描写と教わる側の「なんか変だな」感を表現してくれると、
現代風の面白い『平林』になるのではないかと思いました。
そういうことなので、オチまでやる必要は無いですね。
『ひとつとやっつでとっきっき』と盛り上がったところで、
「平林というお噺でございます」で、切っちゃう方が良いと思います。
立川談志が演ったらどうなるでしょうね。
なに、わすれたあ? 字が読めないんですう?
しょうがねえなあ。 教えてやる、教えてやる。 そのかわり割り前よこせ。
上の字は、これは小朝のカカアの親爺じゃねえか。
林家三平のぺえだ。
下の字? 林家のはやしとも読むんだが、この場合はりんと読んだほうがごろがいいんじゃねえかい。
ぺえりんって読むんだよ。
ぺえりんですか。
そうじゃあねえよ、ペエリン(中国語風に発音する)ってゆうんだ。
この手紙は中国へ届けるんですか。
じゃあ、ひらりんにしときな。
なんていう具合に、ふくらませるというか、山手線から総武線に乗り換えたりして、思わぬ方向へ行くかもしれません。
ついでに、三遊亭円生だとどうなりますかね。
おかたい方はご存知ないでしょうが、麻雀という<あすび>といいますか、この (かたわらの湯飲みを手に取る)
・・・へへばくち・・・じゃあ・・・ない、ま、あすびなんでげしょうな、あれの一番安い手は何かといいますと
これはその道の(湯飲みのお湯を飲む)プロにきいたんですけれどもピンフという手だそうですな。
どういう字を書くんだとききますと平和と書くそうでなるほど、千点なら安いし、平和だと感心したおぼえがあります。
(と、まくらをふっておいて)
ああ、これね・・・ピンリンってよむんだよ。(つっけんどんに)
え?
わからないのかえ、ピンリン。まぬけだねえ。二度と顔を見せんじゃないよ。(と、何故か怒る)
ちなみに、円生百選の子別れの上中下を先日CDで聞きました。
いや、さすが。
亀ちゃんが握っている50銭を見つけるとこは、録音用に視覚にたよらない演出でした。
それじゃ、桂文楽ですと、どう演りますか。もちろん先の文楽。
なんですか、あぁたねえ、この宛名を読めって言うんですか?
そりゃあ、読めますよ。字ぐらいなんてことはないん・・・
あっ・・・これは本字ですよ、こりゃりっぱな本字です。・・・近頃ひらがなは流行らないのかねぇ。
読みますよ、読みゃぁいいんでしょ。
(ひとりごと風に)ずいぶん画数が多いや。こういうときは・・・こう・・・分解しましてね・・・
・・・あっ、一八っつあんだよ。こうくっついてるてぇと読みづらい。気をつけてもらいてぇもんだね。
え〜、読めました。一八です。その下は十文字屋の十。へへ、読めますよ。どんどん読めます。
え? 下の字? ひつこいね、あぁたも。
・・・これはカレンダーでよく見る字ですよ。
え〜、木曜日の<もく>ですよ。はは、ふたぁつならんでますね。お神酒徳利だね、まるで。
続けて読むと、いち・はち・じゅうのもっくもくでやすな。
それじゃ、今度また、ご一緒しましょ。え? いそがしい? いよっ、商売繁盛!
文楽さんはやはり幇間ですね。「たいこもちよりたいこもちらしい」といわれましたね。
だんだん、本題からそれそうなので、この辺で、お後がよろしいようで。
ま、いろいろにふくらませて、現代風にアレンジしてぽっぽさんも演れるように陰ながら応援いたしております。
このあと、小朝師匠が、林家きくお(湯屋番)をはさんで二題演じました。
『片棒』から派生したと思われる、からおけのお葬式の噺。
『うどんや』を思わせる酔っ払いのお客と赤提灯の居酒屋の主とのやりとりの噺。
大笑い。
小朝師匠にしては、赤子の手をひねるが如く、那須野が原のお客を笑わしておりました。
まくらにスプーンを持った医者という話をしましたが、
「いつさじを投げるんだろうな」と思いながら聞いてましたら、
カレーライスを食べたり、視力を測ったり、のどを見たり、なかなか投げませんでした。
これで今夜のお客さんのレベルを推し量るんだそうで、
「今夜はこのくらいで笑ってくれるんだな」ということでした。
2500円。
お得な一夜でございました。
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