ミス

トルコの国歌を聞きましたか?
私は、トルコ国歌が、
日本と韓国の闘志を吸い取ったのではないか、
と、ひそかに考えています。
コーラス入りの重たい国歌はここでどうぞ。


▲をクリックして下さい。
MIDIはTORUKOから
短縮版です。

 
★中田浩二のパス(対トルコ戦)
02/7/20up

トルコの右タッチラインからのスローイン。

トルコの選手が、ボールを頭の上で弾みをつけてピッチに大きく投げ込んだ。

9分前と同じだった。

9分前・・・試合開始のホイッスルが吹かれて1分40秒。
トルコのスローインを中田英寿がからんでボールを奪い、小野にバックパス。
さらに、中田浩二へとタッチライン沿いにボールは戻され、中央の宮本へパスされた。
トルコのフォワードが一人、近寄らずに見ていた。

日本は一次リーグをトップで通過した。
日本中の多くのファンはトルコには勝てると思っていた。
前日の選手インタビューでも、中田浩二は「携帯がたくさんかかってきて、こんなに親戚が多いのかと思った」と冗談とも本音ともつかぬようなことを笑いながら話していた。

ピッチの緊張度は、一次リーグの時とは違っているように見えた。
もしかしたら自信が過信になっていたのかもしれなかった。

だから、この日、日本のチームとしての動きはおかしかった。
パスが少しずつずれているように私には思われた。

前半11分。
小野から三都主へのスルーパスも成功したかにみえたのに、センターリングはトルコのすばやい守備でコーナーキックになった。

コーナーキックもあっさりはじき返され、トルコのスローインになった。

いやな予感。

トルコの長いスローインは、日本陣に達した。
小野が競り勝ち、正確なジャンピングヘッドのパスを三都主へ通す。
三都主はダイレクトで、マイナス気味に中央よりの明神に渡した。

明神はワントラップしながら一瞬、中央から逆サイドを見たが、トルコ選手の速い突進をかわすために、タッチライン際の小野に戻した。
狭い地域でのボール回しが続く。

小野は3人のトルコ選手に囲まれた。
ワントラップしながら反転して中田浩二にバックパスをした。
ゴロのやさしいパスだった。

9分前と同じに、中田はワントラップして横へパスを繰り出した。

そこには宮本のかわりにトルコのフォワードがいた。
宮本は、トルコの高い位置での速い寄りを目の当たりにして、いつものフラットスリーのラインより下がっていたのだ。

ボールは絶好のパスとなってトルコの選手に渡った。

中田浩二は必死に足を伸ばした。

ハサンのキックが中田の足にあたったのか、中田がクリアしたのか、
中途半端なキックがゴールラインをわった。
ボールは楢崎の手にわずかに届かなかった。

コーナーにボールをセットした背番号18のエルギュンは、はやいタイミングでキックした。
バックしてから助走まで一拍の間もとらなかったため、日本はマークの確認が遅れた。

ユミット・ダバラは誰にも邪魔されず高くジャンプした。

日本のゴールマウスは3試合ぶりに破られた。

小野の絶妙のスルーパス。
三都主の走り。
それを上回ったトルコディフェンスの速さ。
だから、前半11分のパス回しも、相手を避けるような形が続いてしまったのだろう。
そのことに気づいた宮本は深い位置に下がった。
気づかなかった中田浩二は・・・。

トルコはこのあと、守備を固めた。

中田浩二は、将来、このワールドカップをどのように回想するのだろうか。
まっさきに、あの最終ラインでの痛恨のパスミスを思い出すのだろうか。
それとも、日本のワールドカップ初勝利をもたらした、柳沢への鋭くて低い正確な中距離のパスを蹴った感触だろうか。

対ロシア戦、中田浩二の低く鋭い中距離のパスが柳沢に向かって送られました。
何人ものロシア選手が壁のように立ちはだかるなか、柳沢の左足へ正確なパスが通りました。
柳沢がダイレクトでロシアバック陣の壁の裏側へはじき返すと、そこには稲本がいました。
オフサイドぎりぎりでしたが、フリーとなり、落ち着いたシュートが放たれました。

対トルコ戦、中田浩二のパスミスには、いくつかの要因があげられます。
トルコの前線からの強い圧力。
日本選手のそれまでよりちょっとづつ遅い反応。
GK楢崎も、予選リーグ中なら、きっとファインプレーで、コーナーキックにはしないように、ボールをキャッチしていたに違いありません。

サッカーの決定的なミスの経験は、いつまでも恥ずかしく、またすっぱいぶどうのような感傷をともなって思い出されます。
私の場合は大事な試合でのPKの失敗です。

 

 
★ホン・ミョンボの反転(対トルコ戦)

試合開始前のセンターサークルにはセレモニーがある。

審判団と両リームの主将が挨拶をしてコイントスをすることになっている。

2002年ワールドカップ3位決定戦も同じようにして始まることになっていた。

韓国主将のホン・ミョンボはすでに審判団と握手し、トルコの主将がくるのを待っていた。
少しして、キャプテンの腕章をつけたハカン・シュクルが走ってきた。
少し微笑んで、ホン・ミョンボとペナントを交換し、さらに笑顔を深くして審判団と握手を交わした。

ハカン・シュクルは、コイントスで攻める方向を選んだときも、その表情は穏やかだった。

ホン・ミョンボはいつものように眉をひそめて、大声でポジショニングの指示を出しながらセンターバックの位置にむかった。

ワールドカップの7試合目、ベスト4の代償として多数の故障者をかかえた韓国は右サイドバックにミッドフィルダーのユ・サンチョルを起用した。

キックオフ。

いつものようにちょこんと動かされたボール。

フォワードのアン・ジョンファンは後ろを向いて、右サイドバックのユ・サンチョルにバックパスをした。
ハカン・シュクルがボールの後を全力で追いかけた。
先ほどのにこやかな微笑みは消えていた。
同時にトルコのもう一人のフォワード、イルハンが韓国ゴールめがけて、まっすぐに走り出した。

ユ・サンチョルはワントラップして、中央のホン・ミョンボへ横パスをだす。

マイナスぎみのパスに後ろ向きになってトラップしたホンが反転して前を向いたとき、イルハンがすぐ目の前にいた。

イルハンの足がボールに触れた。

ボールは右に流れた。

そこに、ボールを追いかけてきたハカン・シュクルが走りよった。

ホンのスライディングをワンタッチでハカン・シュクルはかわした。
ユ・サンチョルのタックルよりはやく、左足のサイドで蹴ったボールがキーパーの傍をすりぬけた。

試合開始のホイッスルから11秒後のことであった。

ワールドカップ史上最も早いゴールは、トルコのエースにとってはこのワールドカップ最後の試合での初ゴールでもあった。

歓喜するハカン・シュクルをホン・ミョンボはいつもの求道者のような厳しい表情で見つめた。
少し疲労の色をにじませて。

元柏レイソルのJリーガー、ホン・ミョンボはとても控えめな感じですが、韓国が決勝トーナメントに勝ち残ったのも彼の功績が大であると、私は思っています。
そう、彼の冷静なディフェンスがね。
決勝トーナメント、ベスト4を賭けたスペイン戦。
PK戦の最後のキッカーはホンでした。
ゴールを決めた後、ものすごい歓声の中、ホンはこぶしを結んだ両腕を広げて、少しはにかんだような表情で韓国選手の輪の中に走りこみました。
喜びの表現も控えめでした。